総科初代学部長、今堀誠二先生（1914－1992年）を「偲ぶ会」が2002年10月27日（日）リーガロイヤルホテル広島で開かれました。先生の弟・和友さん（元東大教授）と妹・百合子さん（元基町高校教諭）が中心となって今夏発行した遺稿集「アジア研究半世紀の軌跡」（非売品）への寄稿者らが招かれました。出席者20人は、広島城を見下ろす33階で昼食をともにしながら、それぞれ今堀先生を語りました。同窓会役員唯一の出席者として、勝手ながら始終を報告します。（田中伸武・52社文）
●同窓会長から電報
同窓会からの電報＝「偲ぶ会の開催を知り、私達の学びの場を創設いただいた今堀先生を懐かしく思い起こします。同窓会を代表し、あらためて感謝のまことを捧げます。同窓会長中洋一郎」＝も披露され、遺族は喜んでおられました。会場の壁には先生の遺影が飾られ、テレビ出演時の声もテープで流されました。
出席者は、和友、百合子さんと、故・宏三（元阪大教授）さんの妻子たちのほか、天野実、渡辺則文、横山英、難波コウ二、今永清二の各現元総科教授、元事務官の山本、藤川行平、入江、実広さん、元広島市職員でイベント会社経営の小林正典さん、田中。
●秀才・庶民感覚・家族思い…
各先生たちの味のある自己紹介やスピーチがあり、生前の誠二先生のエピソードが次々紹介されました。秀才ぶり、学問に対する厳しさ、庶民感覚、世界平和希求の熱意…。特に総科設立時に学内の反発を乗り越え困難な文部省との折衝を重ねた様子はまさに語り種、でした。
際立った雄弁ぶりやワンマン性などキャラクターも型破り。「空前絶後の学者・大学人」だったことをあらためて確かめ合った会でした。
遺族の弟妹、甥姪たちからも、今堀兄弟の結束とそれをリードしていた誠二先生の様子が語られ、家族思いの優しい性格にもジーンときました。
●総科30年に「今堀」顕彰を
再来年2004年は総科設立30周年を迎えます。「総科生みの親」の名を何らかの形で残してもいいのではないでしょうか。「今堀賞」「今堀文庫」「今堀記念講演会」…。
百合子先生によると、誠二先生の著書ひとそろい（本棚１つ分くらい）を近く総科に寄付する予定だそうです。感謝状贈呈などはあるのでしょうか。これを機に今堀顕彰について同窓会でも検討すべきと思いますが、いかがでしょう。
●偲ぶ会での主なスピーチは次の通り。
和友 ６人兄弟も私と百合子だけになった。私は82歳で東京在住、百合子は大阪。一堂に会するのもこれが最後かと考えて、没後10年目で誠二の誕生日の本日、会を開いた。
難波 先生死去の時広報委員長だった。学部葬の支持が得られなかったのはいまだに残念。
天野 元気な先生だったのは誰も否定すまい。先生の写真を自宅に飾っていて、それを見ると元気がわく。私はもともとイモリやカエルのことしか知らなかったが、岡本学部長が殺され、後の学部長を引き受けて警察との対応などに追われた。困ったときに高須へ行って相談に乗ってもらった。よく「自分で考えろ」と言わたが、後で助言をくれたものだ。
誠二先生は、戦後民主主義を標榜した中では珍しいトップダウン型だった。総科に院を、という構想は当時とうてい無理と見られていたが、文部省の幹部たちを次々おさえて行った。上京の時は、坂田道太大臣の同級生の羽白幸雄先生を同行させ、大臣室で「やあドウタ、どうだ」などなどと。トップダウンの前に緻密な作戦を立てていた。「味のある悪筆」など含め、エピソードは枚挙にいとまがない。
今永 誠二先生、宏三先生の後を継いで広島女子大の学長を務めている。学長室には２人の写真があって見下ろされながらの仕事だ。先生から習ったのは「負け犬になるな」だった。「東京にないものが広島にあるんだから勉強せよ」と。東洋史で他の先生と違ったのは漢民族中心ではなく少数民族にもきちんと触れていることだ。
藤川 誠二先生はあと２年長生きすれば文化勲章だったのに残念。「研究者は50歳までに資料集めし、50歳過ぎてから執筆せよ」とよく言われた。学問に対する真摯な姿勢を学んだ。政治に対してもいろいろ考えていた。佐藤栄作が金杯と書を贈った。
小林 広島のテーマを移民として博物館を作る構想を支持してくれた。梅棹忠夫が「今堀が活躍できるよう早く建設を」と言ってくれていたが…。民衆の立場で地を這う視線を持ち、さらに全体を俯瞰しながら足場を固めて跳び越えるような発想をもたれていた。
田中 高校生の時、大学開放講座で先生の講義を聴いてあこがれた。戦争をなくすために何をすべきかといった内容は今も覚えている。講義より言動ぶりから社会変革に対するエネルギーの一部を頂いた気持ちだ。
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