第14号
2008 年発行「高齢者の睡眠研究をしています」
3月で定年退職することが分かっていながら、研究室の片づけや資料の整理と梱包になかなか手がつかず、2月に入ってようやく着手しました。2ヶ月もあると思っていましたが、驚くほどの力仕事ですぐに疲労困憊しました。夜遅くまで引っ越し作業を手伝ってくださった皆さん、ありがとうございました。あの時作った段ボール箱はいくつだったか覚えていませんが、自宅に持ち帰ったものの大半は、まだ開いていません。種から育てたサボテンは30cmを超える大きさになっていましたので、どうしたものかと迷ったのですが、自宅に持ち帰りました。とりあえず南側の軒下においていますが、この冬をどのようにして過ごすか思案しているところです。種から育ったのですから、きっと花を咲かしてくれると期待しているのですが、むくむく大きくなるばかりで、少しもその気配はありません。
4月から福山にある小さな睡眠研究所の所長に就任しました。研究室はまたもや段ボールの山で、早速開いて書架に入れる作業に取り掛かり、5月までになんとか形を整えることができました。結局、2月から3ヶ月間に及ぶ大仕事でした。昭和57年に福井大学から広島大学に移りましたので、自宅の引っ越しと研究室の引っ越しの2つが重なり、もっとせわしない思いをしたと思いますが、記憶にありません。元気の程度が今よりずっと高かったからかもしれません。
福井大学では10年間、入眠期の研究をしました。広島大学では東千田キャンパスのプレハブ実験棟で閉鎖環境室を使って生体リズムの研究をしました。東広島キャンパスに移転して、昼寝の研究や睡眠中の認知活動などの研究が認められ、大きなプロジェクトに参加することができました。またプロジェクトからの要請で高齢者の睡眠問題にも取り組みました。今思い返すと少し間口を大きく広げすぎたように思います。なんとかやってこられたのは、その時その時の院生や学部生の皆さんの奮闘のおかげと思っています。
さて現況は長寿健康科学としての睡眠研究を、いかにして実践に結びつけ支援していくかが課題です。睡眠研究の分野では睡眠時間が短い人は肥る、高血圧や糖尿病になりやすい、心筋梗塞や卒中も起こりやすいなどが常識になっています。ところが睡眠時間はそのままで、不規則な生活もそのままで、やせることだけ考える人が圧倒的多数を占めています。高齢者を対象にした睡眠保健の講演会を開いたり、実情把握のための調査研究をしております。研究員と研究所に併設されている脳外科病院の職員を対象に、週2回20分の所長卓話をしています。これもパワポイントで準備すると結構時間がかかり、時には土日返上で頑張っています。福山までは新幹線で通勤していたのですが、乗り間違えて岡山に行ってしまうなど失敗が続き、今は110kmを車で通っています。結構長い坂があるのでこの冬は慎重に運転しなければと思っています。
私は、4年生のときに物質生命科学コースの藤井研究室に入って、水素貯蔵材料の研究を始め、そのまま博士課程まで進みました。その後に、博士研究員として2年間、今年の3月までドイツのカールスルーエ研究所で研究活動に従事しました。大学生の頃はまさか、自分が海外に住むことになるとは想像もしていませんでしたが、海外生活は私にとって貴重な体験をすることができました。同じ水素貯蔵材料を研究するグループに行ったので、基本的に同じ知識のもとに研究を行えることもあり、対等に仕事をすることができたと思います。とはいえ、海外で生活してみると文化の違いをひしひしと感じました。いくつか大きな違いがありましたが、一つは働き方の違いです。研究者といえども、ドイツの人達は朝9時から働いてみんな5時には帰っていき、週40時間労働というのをきっちり守ります。また、年に30日の有給休暇をもっているので、夏のシーズンなどはみんなが平気で2・3週間の休みをとっていなくなります。それでも、社会が回っていることに初めは驚きと戸惑いを感じました。日本と比べて、全体の生活のペースがゆっくりしているというのもありますし、ドイツ人は合理的にかつ集中して仕事をするからだというのもあると思います。また、日本と違って個人主義であることも大きな違いの一つです。会議や集まりも日本に比べかなり少なく、個人で仕事をやっている印象が強かったです。ただ、その分大勢の人で同じルールを共有していて、それを守っている範囲であれば何も言われることもありませんでした。このようにいろいろなカルチャーショックを味わって過ごした2年でしたが、研究の成果もなんとか出すことができ無事に帰国することとなりました。
今年の4月からは、上智大学でNEDOのプロジェクトの博士研究員として新しい研究を始めています。広島大学の出身研究室と同じ研究プロジェクトですので、たびたび広島も訪れています。都心の私立大学理工学部ということもあって研究室の人数が多く、これまでに経験しなかった環境にやって来たなという感じです。新しい研究テーマは、今までの自分の研究分野だけでなく、他分野にも領域が及んでいます。専門性も大事ですが、これまでの常識に囚われず別の分野にもしっかり目を向けながら、新しいことをどんどんやっていきたいと思っています。
平成10年度入学の三浦と申します。広大・西条では院も含めて9年間過ごし、昨年の4月より神奈川にある産業用光源メーカーに就職いたしました。
学生時代は昨年度で退官なされた永井克彦先生、今回原稿執筆のお話を頂いた東谷誠二先生ご指導の下、超伝導・超流動など低温物性理論について研究してまいりました。私の学部生時代、物質生命科学コースの人数は他コースに比べ少数でしたが先生、先輩、友人に恵まれ非常に楽しい学生生活を過ごすことができました。まだ大学を離れて1年半しか経っておらず、先に関東で就職した同期の友人たちとよく顔を合わせるため、広大で過ごした日々がつい先日の事の様に感じられます。
現在、勤務している会社では主に産業用に使われる光源および、それを利用した装置を製造しており、私は装置の研究・開発の方に従事しております。製造メーカー向けの製品を作っているので、製品が直接皆様の家庭で使用されるわけではありませんが、液晶テレビやCD/DVDのディスクの張り合わせなど、普段の生活で身近にある様々な物を作るのに使用されております。
この中で私は当社の装置内部を冷却するための空気に対する流れ・温度のシミュレーション解析を担当しております。装置にとって熱は品質低下、不具合発生の原因であり、お客様に損失を与えてしまう可能性があるため、装置内部の熱対策は非常に重要と考えられています。しかし過剰な熱対策はコスト増につながるため、安易に行うことは出来ません。そのため、シミュレーションは熱による不具合発生の抑制と、装置製造コストを削減につながる冷却効率向上の2つを主な目的として用いられます。
現在では、数メートルもある巨大な装置から、家庭用PCと変わらないサイズのものまで、納期に追われながら様々なテーマに取り組んでおります。予想通りうまく事が運ばないこともあり、試行錯誤の連続ですが、うまくいった時は新たな価値の創造を実感できるため、非常にやりがいを感じています。
更に研鑽を積み、これら解析において社内で頼りにされる存在になるとともに、一日でも早く自ら新たな製品を開発出来るようになりたいと思っております。
広島大学 総合科学部 同窓会 東広島市鏡山
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