第3号
1997 年 10月 1 日発行
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同窓会インターネットホームページ開設!
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世界にはばたけ総科生
- 佐々木康人さん
- 棚田 徹さん
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退官教官のエッセイ 〜第2回〜
- 戸田 吉信 先生
- 渡部 三雄 先生
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天高く馬肥ゆる秋となりましたが、みなさんいかがお過ごしですか?今年度から広島
大学では7月31日までが前期、8月1日から9月30日までが夏休み、そして10
月1日から後期という学期区分になりました。この同窓会だよりがみなさんのお手元
に届く頃には、まる2ヵ月の長い夏休みを終えた学生たちで総科キャンパスは賑わっ
ているはずです。
同窓会のホームページを開設しました。アドレスは
http://www.ipc.hiroshima-u.ac.jp/~soukaobaです。現在、
試験運用中ですが、総合科学部同窓会に関する情報、卒業生が開いているホームペ
ージへのリンク、同窓会便りのバックナンバーなどを盛り込んでいきたいと思って
います。お気付きの点・要望などありましたら、同窓会の方まで(E-mail :
soukaoba@ipc.hiroshima-u.ac.jp
) 連絡お願いします。また、名簿変更用フォームを用意しましたので、住所変
更の際はこちらも併せて御利用下さい。
現在さまざまな分野で活躍する卒業生に、仕事のことや、総科への熱いメッセージな
どを語ってもらうコーナーです。第2回目の今回は昭和49年度生の佐々木康人さん
と55年度生の棚田徹さんのお二人に登場していただきましょう。
佐々木康人
昭和49年入学/情報行動科学コース/現在神戸学院大学栄養学部助教授
みなさん、こんにちは。私は、総合科学部一期生の佐々木康人といいます。今回、
総合科学部の坂田先生から上記表題でひとこと書くように依頼されましたので、最近
感じていることを書いてみたいと思います。5年前になりますが、現在の大学から、
英国のCardiffにあるWales大学医学部にHonorary Research Fellowとして、13カ月間
滞在いたしました。それ以降、夏休みには2〜3週間当時からのsupervisorの先生を
訪ねたり、国際学会で外国に出ています。そのときにいつも感じることは、日本の学
生はひとりの人間としてみるとまだか弱い、ということです。昨年、Vancouverでの
国際学会のおりにたった1人で自分の背丈ほどある荷物を背負っている女子学生にバ
スの中で会いました。彼女はGlasgowからCanadian Rockyの湖でカヌーを漕ぐために
旅行中で、大学では生化学を専攻しているということでした。会話が始まると、面識
のない先生方に早速自分の研究内容について明快に説明を始めていました。日本の女
子学生はあんな重い荷物を担いで旅行できるだろうか、語学の問題を除いてもはたし
て彼女のように説明できるだろうか、とふと考えてしまいました。留学中にも感じた
ことでしたが、少なくとも英国の学生は真摯によく勉強をします。(私は、学生時代
あまり勉強をした方ではないのであまり強いことはいえませんが、、、。)英国の大
学には韓国や香港はじめ、アジアからの留学生が多く、たとえば、Malaysiaからは毎
年5万人の留学生が来ているそうです。一方、日本では、学生数が減り大学自体が生
き残りを模索しなければいけない時代になりました。こういう状況下で、どうすれば
、世界に負けないたくましい学生が育てられるかと、思いを巡らせている昨今です。
どうか、後輩のみなさん、もっと、世界に出て自分を鍛えて下さい。
棚田 徹
昭和55年入学/地域文化コース/現在テレビ新広島アナウンサー
総合科学部を何とか卒業して、アナウンサーと呼ばれる仕事を始めて14年目に入
りました。5年半続いたニュースキャスターもこの3月で終わり、現在は「釣りご
ろつられごろ」(毎週土曜日)と10月からの新番組「広島もてなしキング」(毎
週月曜日)の2本になりました。どちらも週1回の番組です。ニュースの前には朝
のワイドショウを担当していましたので、月金のベルト(月曜から金曜までの毎日
の生番組)は合計8年続いたことになります。その8年間は、平日は休めない、決
まった時間にはスタジオにいなければならない、土日に仕事が入ると2週間あまり
休みがなくなってしまう、変なことを口走るとヤバイ、というかなり精神的にもプ
レッシャーのかかった状態でした。それが終わりしばらく羽を伸ばすことができる
かなと思ったら、大きな間違いでした。
もしかしたら週2回の番組で何が忙しいのかと思われるかも知れません。実際アナ
ウンサーになって「テレビに出ていない時は何をしているのですか」という質問が
多いのには困ってしまいます。自分でも一体何をしているのか判りませんから。で
はありません。確かにテレビに出ている時よりも出ていないときの方が圧倒的に多
いのですから、疑問に思われるのも判らなくはありません。しかし、学校の先生に
向かって「授業の無いときは何をしているのだろう」と質問をぶつける人はまず居
ないじゃーありませんか。アナウンサーといっても私は「局アナ」というジャンル
に分類されますから、会社員です。サラリーマンですから規定の勤務時間もありま
すし、テレビに出ている時だけ出社しているように思われている節もありますが、
はっきり言ってそれは誤解です。本当です。
ちなみに「広島もてなしキング」は、大好きなタレントを自宅に招いておもてなし
をしようという1時間番組ですが、そのロケは大きく3つに分けられます。一つは
私が東京まで行ってタレントに会い、もてなしを受けてくれるよう頼み込むという
シーンを撮るロケ。次に家族のところに行って、タレントの承諾を伝える場面を撮
るロケ。もう一つはいよいよタレントが家族のところを訪問するというロケです。
つまり私に限って言えば、1つの番組で3日間のロケが発生する訳です。もちろん
他のスタッフはそれだけでは済みません。それに「釣りごろつられごろ」のロケや
ナレーションの収録、夜勤、その他の単発番組が入ってくるともうパニック状態で
す。つまりテレビに出てるときより出てないときの方が、厄介です。一番困るのは、
ロケの予定などはしょっちゅう変わるし、大きな事件事故、台風なんかがくるとス
ケジュールが一気に変わるので、友達との約束をしにくいことです。そのうち誘っ
てくれなくなります。たぶんこれはテレビ業界の現場で働いている人間の共通の悩
みだと思います。もし近くにそういう方が居たら、見捨てずに優しくしてあげましょ
う。
戸田 吉信 先生
平成8年3月退官/専攻・フランス文学/現東亜大学大学院教授
ベルグソンという哲学者が「雪だるま降下論」とでも言うべき時間論を展開してい
ます。平たく言えば、おぎゃーと生まれた瞬間からあらゆる生命体に流れ始める時
間は、あたかも雪塊が斜面を降下するがごとくで、最初はごくゆっくりと、だが次
第に雪だるまが大きくなり、だんだんと降下のスピードは加速されていくというわ
けです。幼少の頃は緩やかに流れた時間が、年齢を重ねるにつれ、加速度がついた
かのように早くなっていくことは、誰しもが実感することです。いかに人生が七十
年、八十年になろうと、所詮は一場のまぼろし、「邯鄲の夢」なのでしょう。
昨年退官した後、一日書斎にこもり、時に友人と碁を打ち、また海釣りに親しむと
いう、長年待望した生活を続けております。出張が結構多く、そのたびにくたびれ、
いつまで続くかなと思いながら、時の流れはますます早しというところです。
私事はともかく、総合科学部の教育が真価を問われる時期であることを、つくづく
と痛感します。近代国家が喫緊の要請とした専門家の集団が、あたかも老朽化した
機械のように硬直化して行き詰まりながら、なおかつ自己の利益と保身に汲々とし
ているように思えるからです。総合科学部の精神は、片々たる専門主義に弓を引く
ことにあります。陸軍のことは陸軍に、海軍のことは海軍にと言っているうちに、
社会全体が同業組合の寄り合い世帯のようになってしまった。官僚機構の改革だと
言いながら、自分の所はもう不要だと主張する人間が一人でもいるでしょうか?大
学とて例外ではありません。
世界史の新しい時代が待望するのは、まことの意味で私心のない、そして全体の
立場に立つことのできる人間だと思うのです。総合科学部からそのような人材が輩
出して社会を担うとき、消え去った老兵はやんやの拍手を送るでありましょ
う。
渡部 三雄 先生
平成9年3月退官/専攻・統計物理学/現総合科学部非常勤講師
同窓会のみなさん、お元気でご活躍のことと思います。私は今年の3月無事「卒業」
(定年退職)し、みなさんのお仲間入りを致しました。昭和52年創設間もない総
合科学部の一員に加わってから、ちょうど20年間勤務したことになります。この
昭和52年は第一回生が4年生になった年であり、ユニークな新構想学部の教育の
成果を初めて世に問う就職活動を控え、先生方も学生たちも不安を抱きながらも大
変活気にあふれていたことを懐かしく思い出します。総合科学部の20年間、生物
圏科学研究科の創設、学部のコース改編、最近では大学設置基準の改定(いわゆる
大綱化)を受けた教養的教育の改革等々、いろいろなことがありましたが、この間
の最大のイベントの一つはやはり新キャンパスへの移転でしょう。同窓生の多くの
方はもちろんあの狭くて汚かった旧キャンパスで勉学に励んだわけですが、劣悪な
条件にも拘わらずよく頑張ってくれたと思っています。旧キャンパスに比べると、
今のキャンパスは夢のような環境(周囲の自然環境も含めて)に恵まれています。
この恵まれた条件の中で、より良い教育と研究が行われて学部がさらに発展して行
くことを願っています。学部長在任中に学部20周年と生物圏科学研究科10周年
という節目の時を迎え、記念の式典やシンポジウムなどの行事をみなさんと協力し
て無事盛大に開催できました。同窓会にも大変お世話になりました。学部の来し方
行く末を考える良い機会になったと思います。近年の大学改革の嵐の中で「総合」
あるいはこれと同じ趣旨の名の付けられた学部が数多く創られましたが、これらの
学部と先輩格のわが学部や東大教養学部などが連携して「新構想学部」の在り方を
論ずる全国的組織が、「21世紀へのパラダイムシフト―転換期の大学と学問―」
と題して開かれた学部創立20周年記念シンポジウムを契機とし、わが学部が音頭
を取って発足したことは、大変喜ばしいことでした。21世紀に向けて、総合科学
部の掲げてきた理念の重要性はますます大きくなっています。「総科」のさらなる
発展のため、同窓会の強いサポートが必要です。そのためにも同窓生のみなさんが
ますます各分野で活躍され総合科学部の声価を高めていただき、同窓会がますます
発展されることを心より願うものです。